5-1.独占の問題点

自由競争と資源配分

経済学の考え方のひとつとして、「市場の機能がうまくはたらけば、資源が効率的に配分される」というものがあります。

これは、自由な競争が「効率的」に資源を配分することを意味しています。

経済学が想定するのぞましい競争の形として、「完全競争」があります。これは、「無数」の参加者が生産や消費をおこなっている状態です。

不完全競争

現実の経済では、なかなかこの「完全競争」状態にはなりません。消費者の数に比べて、生産をおこなう企業の数は少ない傾向があります。また、生産を おこなう企業の間でも生産規模や技術の差があります。はじめは自由な競争に近い状態であっても、いずれ勝者と敗者にわかれて、少数の企業が市場を支配する ようになります。

これが「独占」などの「不完全競争」市場です。

独占価格
・・・農産物や魚介類などの価格は、需要と供給の変化に応じて速やかに変化しますが、貯蔵のきく工業製品の価格は、必ずしもそうではありません。特に、少数の大企業が生産や販売市場を支配している寡占産業では、価格よりはむしろ品質やデザインなどの面で競争するのがふつうです。寡占化が進むと価格競争は弱まり、少数の企業が足なみをそろえて、価格(独占価格と呼ばれる)や生産量を決めることになりがちです。  価格競争が弱まると、消費者は不当に高い価格を支払わされることになりかねません。そこで、競争をうながすために独占禁止法が制定され、公正取引委員会がその運用にあたっています。(125P:下線部は引用者による)

効率的でない資源配分

たとえ「独占」状態であっても、企業が完全競争のときと同じ価格で商品を供給する場合は、資源配分の問題は出てきません。

しかし、企業は「利潤」の最大化を行動目標とします。

よって、「独占」企業は「利潤」が最大となるように生産量を決めることになります。価格も完全競争に比べると高くなるでしょう。これによって、生産者としての独占企業はより多くの利益をえることができます。

それに対して、消費者はより高い価格で買うことを余儀なくされます。

よって、社会全体からみると、「独占」は「完全競争」にくらべて資源配分がうまくいかなくなるといえます。

このように「市場」は、かならずしもうまくいかない場合があります。

→ 5-2.市場の失敗