新しい通貨に名前を
休憩を終え、参加者たちは再び席につきました。
王さまは全員の顔を見渡し、ゆっくりと口を開きます。
「……さて、先ほどまでの議論で、新しい通貨の仕組みと流通方法はおおむね固まったわけだが、皆の理解と同意でよいな。」

うなずきが広がります。
王さまは続けます。
「では、ほかに意見はあるか。」
若手官僚のシンイチが手を挙げました。
「陛下、この新しい通貨には、ぜひ名前をお付けいただきたいと思います。」

商人の一人が首をかしげます。
「名前ですか? 今まで通り、金貨や銀貨と同じ呼び方でよいのでは。」
「『ゴールド』や『シルバー』の単位に合わせれば混乱も少ないでしょう」と別の者も言います。
しかしシンイチは首を横に振ります。
「これは、新しく作る、『わが国の』通貨です。今までの金銀とは別物ですから、名前も新しくすべきです。これを手にした人びとに『これは自分たちの通貨だ』という意識を持たせるためにも。」
王さまは深くうなずきました。
「なるほど、それもそうだ。では、意見を出し合ってくれ。」
会議の場がざわめきます。
「では、メタルはどうでしょう。」
「いや、金属の匂いが強すぎる。紙幣と合わん。」
「ペーパーは?」
「安っぽく聞こえる。」
「クラウン(王冠)は?」
「子供たちが頭にのせて遊びだす。」
「リーフ(葉)などは?」
「軽すぎる。飛んできそうだ。」
議論はなかなかまとまりません。
そのやりとりを、ひめさまは部屋の隅で静かに聞いていました。
女官長が小声でささやきます。「ひめさま、何かよいお考えはございませんか」
しばし考え込んだひめさまは、やがておそるおそる手を上げます。
「……あの……よろしいでしょうか?」
その声はかすかでしたが、部屋の隅まで届きました。
会議室の視線が一斉にひめさまへ向きました。

王さまは柔らかい声で促します。
「申してみよ。」
ひめさまは少し緊張しながら言いました。
「……『タントン』はどうでしょう。小さい頃、お父…陛下のお肩をたたいた音が『タン、トン』と聞こえましたので。」
しばしの沈黙。
やがて一人の商人が笑みをこぼします。
「タントン……ですか。」

「おお……。」
「軽やかで覚えやすいですな。」
「音の響きがすばらしい。」
「なにしろ、肩たたき券から始まったのですから。これはいい。」
王さまは、ゆっくりと満足げにうなずかれました。
「よし、それでいこう。新しい我らの通貨は、……名を『タントン』とする」
会議室に拍手が広がり、ひめさまはほっと息をつきました。

タントン、その名が、やがて王国の歴史に刻まれて、そして世界中にひろがっていくことを、このときは誰も知らなかったのです。

「通貨タントンの誕生」(Geminiにて生成。)