「炭屋と洗濯屋」と外部不経済

炭屋と洗濯屋
炭屋の近所に、洗濯屋がひっこしてきました。炭屋は洗濯屋をたずねて、一緒に住まないかと誘いました。家賃も安くすむし、ほかにもいろいろ便利だろうと、いろんな理由をあげたのですが、洗濯屋いわく、

「それはムリだ。わたしが白くしたものを、あんたはススで真っ黒にしてしまうだろうから。」

似た者どうしでないと共同作業は難しいということをこの話はあらわしています。(イソップ寓話)

このお話は、ミクロ経済学『6.市場の失敗』の「6-1.外部性」から、「外部不経済」をあらわしています。

外部性とは?

外部性(externality:外部効果)とは、ある経済主体の意思決定(行動)が他の経済主体の意思決定に影響を及ぼすことをいいます。

この寓話の場合、炭屋さんの経済活動が、洗濯屋さんの経済活動に影響を与えることをさします。双方ともに、自分の利益を最大にしようとして経済活動をおこなっています。でも、この両者はあまり相性がよくありません。細かい炭のよごれは、洗濯物には大敵です。

このように、ある経済主体の活動が、他の経済主体の活動にとって不利に働くものを「外部不経済」といいます。例としては「公害」があります。

解決策は?

このお話では、「一緒には住まない」ことで、双方に問題をおこさずにすませるという解決策をとりました。これが可能なのは、この2人が割りと移動が気軽にできる個人だからです。

もし、社会全体でみたらどうでしょうか?モノを綺麗にするサービス業も、燃料を扱う産業も、社会には必要です。

この場合、双方の交渉で解決するやり方と、政府が介入して解決するやり方が考えられます。

政府が介入する場合は、問題の解決コストとして、税金を徴収することが考えられます。このような税金を「ピグー税」といいます。

関連項目(経済学道場)

→ミクロ経済学『6.市場の失敗』「6-1.外部性

「金の卵をうむガチョウ」フローとストック

金の卵を生むガチョウ
ある男が神様から金の卵を生むガチョウを授かりました。ところが男は、金の卵が少しずつ生まれるのが待ちきれず、ガチョウの中身は丸ごと金だと思いこんで、殺してしまいました。でも、中身には金はまったく入ってませんでした。

このように、強欲な者は、もっと多くを欲しがって、今あるものさえ失うことがあるのです。
(イソップ寓話)

この寓話は、「フロー」と「ストック」という経済学の重要な考え方をつかむのに役立ちます。とくにマクロ経済学で重要です。

「国内総生産」(GDP)は、1年間に国内でうみだされた付加価値の合計ですので、これはフローになります。

「資本」(K)は、ある時点で「どれだけ存在するか?」ですからストックです。この資本を生産という活動に向けると、「投資」(I)になります。投資はフローと考えます。「1年間にこれだけ投資して、どれだけ儲かったか?」という考え方をするからです。


関連項目(経済学道場)

→マクロ経済学「1-1.国民所得とは何か?

「ウサギとカエル」一般均衡

この波紋のイメージが、

エッジワースのボックスダイヤグラムです。

→ ミクロ経済学(4)一般均衡「4-1.パレート効率性

なんと!

一般均衡とは?

「部分均衡」では1つの財をとりあげましたが、
「一般均衡」では複数の財をとりあげて、お互いに影響を与え合う様子を分析します。

そして、この「ボックスダイヤグラム」では、複数の登場人物(経済主体)の間で、複数の財をどのように分配するかをみていきます。

「漁師とニシン」不確実性

漁師がニシンを引き上げた。

ニシン「私はまだ小さいので、今日は逃がしてください。いずれ大きくなったら、私をつかまえてください。」

漁師「手元にある儲けを捨てて、不確かな希望をおいかけたら、俺はおろかではないか。」

たとえ小さくても、今ある儲けは、大きくても見込みにすぎない儲けよりものぞましいということをこの話はあらわしている。(イソップ寓話)

このお話は「不確実性」を理解するのに役立ちます。

将来の結果を事前に予測できないことを「不確実性」といいます。
例として、資産運用をかんがえてみましょう。

投資をおこなう人は、確実に得られる「効用」と、「不確実性」のある「期待効用」を比較して意思決定をすると考えられます。

このお話でみると、

  • 確実に得られる効用 → つかまえたニシン
  • 期待効用 → 今は逃がして、成長したらつかまえるニシン

ここで大事なのは、後者は、「つかまえられるかもしれない」ということです。つまり、ニシンをつかまえられる「確率」を考える必要が出てくるのです。

効用そのものを比べたら、「小さいニシン > 大きいニシン」です。

でも、手元にあるニシンを逃がして、それが成長して、またつかまるかどうかを考えた場合、漁師は「不可能>可能」と考えました。それがこのことばにつながります。

漁師「手元にある儲けを捨てて、不確かな希望をおいかけたら、俺はおろかではないか。」

不確実性についての詳しい説明は、こちらのサイトからどうぞ。

→「不確実性」(経済学道場)