2.面会の間
面会の間には、若い官僚と、一人の商人が静かに待っていました。
商人の手には、小さな革袋と秤。王家の宝物を買い取るために呼ばれたのです。
ほどなく、ひめさまたちが入ってきました。

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互いに礼を交わすと、女官長が尋ねます。
「財務長官は、どうされたのです?」
若手官僚は口ごもりました。
「はい、その……」
「どうして来ないのです?」
「……あまりにもおいたわしくて。我々の力が足りなかったばかりに、このようなことに。その、とても顔向けできないとの……」
商人は黙ったまま、視線を落としています。
女官長が鋭い声を向けました。
「あなたは顔向けできるのですね。」
若手官僚は、何も言い返せません。
「やめて。」
ひめさまがやさしく制します。
「ご苦労さまでした。」
そして、商人に向かって言いました。
「あなたも、ご苦労さまです。」
そのとき、廊下からどたどたと走ってくる足音が響きました。

「何事ですか! 騒々しい。」女官長が声を上げます。
扉が開き、財務部の職員が息を切らして飛び込んできました。
「大変です! 陛下のお召しです。」
「どうされたのだ?」と若手官僚。
「財務長官が……発狂しています。」
「何かの間違いだろう……」
「それが、服を脱ぎ捨てて号泣しているんです!」
「行ってください。陛下のお召しです。」
ひめさまの声は落ち着いていました。
若手官僚はひめさまの方を向いて、一礼します。
「申し訳ございません。」
そして商人とともに、急ぎ足で退室していきました。
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