「ミクロ経済学」の「消費者理論」では、「消費者」の行動が商品の「価格」に与える影響を分析します。
これに対して、「マクロ経済学」では、国民の「消費」行動が「国全体(マクロ)の経済」に与える影響を分析します。
公民の教科書でみてみましょう。
収入と支出
家計は収入を得て、それをさまざまな目的のために支出します。収入と支出の活動をとおして家庭を維持していくことを家計といいます。会社員や公務員の家計では、給料が主たる収入です。農家や個人商店の場合には、事業によって得られた利益がおもな収入になります。支出のうち、食料品、衣服、娯楽、それに教育や医療などへの支出は、消費支出と呼ばれます。これに対して、銀行預金や生命保険料の支払いなどは、貯蓄と呼ばれます。 一般に、収入(所得)から消費支出と、税金や社会保険料などを差し引いた残額が貯蓄です。貯蓄は、将来の支出に備えるためのものです。限られた収入を有効に活用するためには、消費と貯蓄への配分を合理的に行うとともに、それぞれの内訳にも気を配らなければなりません(108-109P:下線部は引用者による)。
消費は所得に、所得は消費に
人々は「収入」(所得)を、「消費」と「貯蓄」にふりわけます。
「消費」とは、他の人が生み出した「価値」を「使う」ことですが、使うことは「ゼロ」になることを意味しません。財やサービスを購入するために支払われたお金は、別の人々の「収入」(所得)になります。
つまり、「誰かが使うことは、誰かが稼ぐこと」になるわけです。浪費はその本人や周囲の人々にとってはさまざまな問題となる場合がありますが、経済全体からみると、他人の収入(所得)を増やすことにつながります。
また、収入(所得)が増えると、人々は消費を増やす傾向にあります。このように
所得 → 消費 → 所得 → 消費 ……
という流れが繰り返されていくことで、一国の経済は成長していくのです。
貯蓄の力
消費は収入(所得)に影響を与えます。よって、経済全体からみると、人々がお金を貯めて「貯蓄」ばかりするよりは、どんどん使って「消費」したほうがいいことになります。
でも、「貯蓄」の影響がゼロであるというわけではありません。 たしかに、収入の一部を自分の手元に貯め込んでしまう場合は、経済全体に影響を与えることはできなくなります(これを「タンス預金」といったりします)。
でも、実際には人々が「貯蓄」をする場合は、銀行などの金融機関に預けます。この預けられたお金(預金)を、金融機関は企業や個人に貸し出します。お金を借り入れた企業や個人は、「消費」や「投資」をおこなって、さらに経済を動かしていきます。
このように、人々がとった経済的な行動は、社会全体でみると他人の経済活動に影響を与えることがわかります。これが「マクロ」の視点です。
→ 3.生産者と利潤
→ 3-1.利潤を求めて