「独占」のほかにも、市場には問題点があります。
財の性質上、市場でのやりとりに適さないものがあるからです。
公共料金
たとえば、電気、ガス、水道などの公的サービスです。
公共料金
市場経済でも、すべての価格が市場で決められるわけではなく、またそうするのが望ましいわけでもありません。電気・ガス・水道などのサービスは、国民生活にあたえる影響が大きいために、その価格(料金)は公共料金と定められ、国や地方公共団体が決定や認可をしています。(125P:下線部は引用者による)
これらのサービスは、人々の生活に不可欠です。
また、巨大な設備も必要です。このようなサービスを供給できる企業は限られてくるので、市場にまかせてしまうと「独占」状態になってしまいます。
これらの電気・ガス・水道は、「あったら便利」というよりも、「ないと困る」性質の商品です。独占企業が利潤最大化行動をとると、人々に与える影響があまりにも多いため、政府は価格の決定に対して規制を加えることになります。
このような価格を「公共料金」といいます。なお、電気・ガス・水道などの巨大な設備が必要となる産業を「費用逓減産業」といいます。
市場の失敗
このほかに、経済活動では、「公害」などの問題がおこることがあります。公害とは、企業が利潤を追求することによって、社会にマイナスの影響を与えてしまう状態です。
このように、「市場」だけでは解決できない経済的な問題を「市場の失敗」(market failure)といいます。
公害の発生と原因
企業の生産活動や人々の日常生活にともなって生じる大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音などによって、地域住民の健康や生活環境が損なわれることを、公害といいます。(138P:下線部は引用者による)
公害
企業の生産活動や人々の日常生活では、どうしてもゴミなどの廃棄物が発生します。これは「負」(マイナス)の「財」です。
また、「音」は形のないものですが、音楽のようにサービスとして売買されるものの他に、機械の騒音のように人々に「負」(マイナス)の影響を与えるものもあります。
このように、経済活動にともなって社会的に「負」(マイナス)の影響を与えるものを公害といいます。なお、公害などの社会的な「負」(マイナス)の影響を経済学では「外部不経済」といいます。
また、生産活動にともなって、派生的に「正」(プラス)の影響が出る場合は「外部経済」といいます。
「外部不経済」と「外部経済」はまとめて「外部効果」(外部性)といいます。
政府の役割
この公害については、企業と地域住民の間で交渉をおこなって問題の解決をおこなうことが考えられます。しかし、これらの問題を一企業や住民だけで解決していくのは、法的な問題でも、金銭的な問題でも大きな困難が予想されます。
よって、人々の生活環境を整備していくことについては、自治体や国などの「政府」の役割が重要になってきます。