2-1.満足感を求めて

中学の公民の教科書では、商品の選択について、次のように説明しています。

商品の選択
もっと便利に、もっと豊かに。人間の欲求には限りがありません。友人が新しいゲームソフトを持っていると、自分もほしくなってしまいます。テレビの広告や 雑誌を見ていると、ねむっていた欲求が目を覚まします。しかし、わたしたちは無限の欲求を満たすことはできません。欲求は無限でも、収入や時間には限りが あるからです。わたしたちにできることは、限られた収入と時間の範囲で、ほんとうに必要な商品の選択を行い、選択をとおして少しでも自分の目標に近づいていくことだ、といってよいでしょう(出典『新しい社会 公民』東京書籍。108ページ:下線部は引用者による)。

欲望の満足

経済学が想定する人間像「経済人」は、自分の私利私欲に忠実です。

「あれがほしい。」、「これもほしい。」、「あれがやりたい。」、「これはやりたくない。だから、誰かに代わりにやってもらいたい。」などの欲望を満たすことだけを追求していきます。

なぜ欲望を満たすことが大事かというと、それが気持ちよくて「満足感」が得られるからです。ただ、「欲望」とか「欲求」ということばは、かなりキツイ印象がありますので、経済学ではこの「満足感」を、「効用」(utility)ということばであらわします。「utility」には、「有用なこと」という意味があります。

「効用」の性質

この、消費者が得る満足感としての「効用」は、次のような性質があります。

①消費量が増えるほど、「効用」(満足感)も増えていく。
つまり、「あればあるほどうれしい」ということです。いくら増えても、決して嫌になることはありません。

②ただし、消費量が増えるほど、「ありがたみがだんだん少なくなる」ことはあります。
好きな食べ物を食べるときのことを考えてみましょう。

①の前提がありますので、お腹がいっぱいになったり、飽きたりすることはありません。 それでも、「最初のひとくち目」の「効用」(満足感)に比べると、しばらく食べ続けてからの「ひとくち」の「効用」(満足感)は、どうしても小さくなることでしょう。

このような「効用」(満足感)の性質について、「ミクロ経済学」の「1.消費者理論」では考察を深めていきます。

→ 2-2.予算の壁