6-2.金融

金融(finance)とは、お金を融通することです。「融」には融けて液体になるという意味がありますので、お金が世の中を水のように流れる様子をイメージしてみてください。

金融とは
資金が不足している人と余裕がある人との間で行われる資金の貸し借りは、金融と呼ばれます。金融は、企業が株式や債券を発行してお金を集める場合がそうであるように、貸し手と借り手が直接的に行う場合(直接金融)もあれば、銀行や保険会社などの金融機関を仲立ちとして行われる場合(間接金融)もあります。「銀行からお金を借りる」ときにも、間接的に預金者からお金を借りていることになるのです。(126-127P:下線部は引用者による)

資金の集め方にはいくつかの方法があります。

  • 直接金融・・・貸し手と借り手が直接結びついている。株式や債券など。
  • 間接金融・・・貸し手と借り手の間に、銀行などの金融機関がある。

金融機関として「銀行」のはたらきをみていきましょう。

銀行の役割

銀行はおもに、貸し借りの仲介をおこなうところです。自分のお金を貸すだけでなく、他の人から借りたお金を、別の人に貸すという役割を担っています。

銀行の働き
資金の借り手は貸し手の銀行に対して、一定期間後に借り入れ額(元金)を返済するだけでなく、毎年(毎月)、利子を支払わなければなりません。元金に対す る利子の比率を、利子率といいます。銀行は貸し出し先から利子を取り、預金者には利子を支払います。貸し出し利子率は預金利子率をうわ回り、その差が銀行 に利潤をもたらします。(127P:下線部は引用者による)

お金は大切なものなので、その保管には注意が必要です。盗難防止のために、頑丈な建物や倉庫(金庫)が必要です。個人の家でこれをやるのは大変なので、お金の保管を専門におこなう業者が出現しました。

人々は自分のお金の保管をその業者に頼みます。業者はそのとき、「○○のお金を預かりました」という証明書を発行しました。預けた人は、好きな時に 自分のお金を取りに行くことができるという「便利さ」を手に入れているわけですから、本来ならお金の保管料を「払う」必要があるわけです。

でも、実際には全く逆です。預けた方がお金を払うのではなくて、預けた方が「利子」としてお金を手に入れます。

これはなぜでしょうか?

仲介業者としての銀行

これは、銀行が仲介業者としての役割を果たしているからです。

お金を預けた人は、「とりあえず今はお金を使わなくてもよい」という人です。世の中にはこの他に、「今、お金は無いけど、お金がどうしても必要だ」 という人がいます。個人と個人のお金の貸し借りは、いろいろ問題がおこる場合があります。そこで銀行が仲介業者として両者の間の橋渡しをするわけです。

つまり、銀行にお金を「預ける」ことは、銀行にお金を「貸す」ということになります。銀行は、お金を預ける人のおかげで、ビジネスを大きくすることができます。よって、一種の利用料として、利子を預金者に支払うことになります。

この、銀行に預けられた「預金」は、お札やコインのような「現金」と同様に、「貨幣」として扱われます。

預金通貨
 わたしたちは、日本銀行の発行する紙幣や財務省の発行する硬貨のことを、ふつう「貨幣(通貨)」と呼んでいます。しかし、通貨統計を見ると、紙幣や硬貨(現金通貨は通貨全体の1割以下にすぎません。大半は銀行預金などの預金通貨です。なぜ預金通貨が「貨幣」なのでしょうか。
 預金とは、その現金を銀行の金庫に保管してもらうことではありません。もしそうなら、わたしたちは利子をもらうかわりに、銀行に保管料を支払わなければな らないでしょう。わたしたち預金者が利子をもらうのは、銀行にお金を「預ける」からではなく、お金を「貸す」からです。お金を借りた人がそのお金を自由に 使うことができるように、銀行も借りたお金を自由に使うことができます。しかし、銀行は預金者の現金引き出しに応じる義務を負い、逆に預金者は現金を引き出す権利を手にします。この権利が現金通貨のかわりをするのです。(128-129P:下線部は引用者による)

銀行は、基本的に、「安く借りて、高く貸す」ことによって、利益を上げているのです。
これだけだと、ただ金儲けをやっているだけに思えるかもしれません。個別的にみると、たしかにそうです。でも、世の中全体でみると、銀行は非常に大きな役割を果たしています。それは「信用創造」です。

信用創造

 

預金通貨の創造
銀行の貸し出しはふつう、銀行口座への振り込みによって行われます。つまり借り手は貸し出されたお金を銀行に対する預金として持ち、この預金でさまざまな支払いを行います。預金の一部は現金化されるかもしれませんが、多くは預金のままで預金通貨として流通します。そのため、銀行は手持ちの資金の数倍の資金を貸し出すことができます。(129P:下線部は引用者による)

原則として、銀行に行けば、預けたお金を「いつでも」引き出せます。「いつでも」引き出せるから、預けているわけです。預けていていた人が、全員、同時に、全額を引き出すことは、普通はありません。銀行の手元には、常にお金が残ることになります。
この手元にあるお金を遊ばしておくわけにもいかないので、銀行は、信用のおける人に貸して、利息を得てさらにお金を増やしていこうとします。

この他に、お金を借りた人が、銀行に預ける場合も考えられます。そのお金を使って、また別の人にお金を貸せば、銀行はさらに利息を得て儲けることができます。
この繰り返しによって、世の中に出回るお金は、どんどん増えていきます。

銀行に行けば、預けたお金を「いつでも」引き出せるという「信用」によって、新たなお金(貨幣)がどんどん創造されて、世の中に出回っていきます。このことを、「信用創造」とか「預金創造」といいます。

信用危機

でも、この「信用創造」には、大きな弱点があります。「いつでも」引き出せる預金が、そうでなくなった瞬間に、崩壊してしまう可能性があるのです。 また、お金を借りた人が、お金を返せなくなってしまった場合、その規模があまりに大きくなると、銀行自体が破綻してしまう可能性があります。

このように、信用をあつかう銀行には危うさが伴っています。
よって、人間の歴史では、この銀行や貨幣の流れを取り扱うために、国家レベルの機関を生み出しました。それが「中央銀行」です。


(補足)債券と株式の違い

正確には、株式と債券は異なります。

債券は借金

国や会社が借金をするときに発行するものが「債券」です。借金ですから利子がつきます。お金を貸す時は、相手がつぶれないかどうか心配になるもので すが、国はあまりつぶれることはないので、貸す相手としては安全です。銀行に預けておくよりは利子も高いことが多いので、資産運用の方法として使われる場 合があります。よって、この「債券」自体が売買されることがあります。

【債券】お金を借りたときに、その証明として発行する証明書のことを債券といいます。債券には、会社が発行する社債、国や地方公共団体が発行する国債や地方債などがあります。債券は、株式と同じように売り買いされます。(126P)

株式は参加権

「債券」は「借金」の証明書です。これに対して「株式」は「儲け話への参加権」の証明書に当たります。

  • ある人がお金儲けの計画を立てています。でも、資金が足りません。
  • この場合、お金の集め方としては、銀行に借りたり、債券を発行したりするやり方があります。でも、新しい事業は失敗する可能性が高いので、まとまったお金を借りるのは難しいことです。
  • このようなときには、お金を借りる他に、人々に自分の儲け話をもちかけるやり方があります。「どうですか、ひとくち乗りませんか?」と「仲間」(company:会社)に誘うのです。
  • 必要な資金については、その額を小規模に分けて(shares:株式)、お金を集めます(stock:株式)。これが「株式」です。「株式」を購入した人は「株主」になります(米語stockholder/英語shareholder)。
  • これで事業を始めることができます。
  • 事業が成功して、儲けが出たら、その分を「配当」として「株主」にまわします。
  • 配当の割合や、計画の進め方の議決権については、株式をどれくらい持っているかに左右されます。
  • また、この「株式」は売り買いされます。人気のある株式の価格(株価)は上昇し、これは会社の信用を高めます。よりお金を集めやすくなり、会社の規模も大きくなっていきます。
  • ただし、商売が失敗した場合、株式の価値は暴落し、出資した(出した)お金を損する危険もあります。これが比較的安全な「債券」との違いです。

→ 6-3.中央銀行