政府支出を増減させて、景気を調整しようとする政策を「財政政策」といいます。
景気の安定化と財政政策
景気を調節することも政府の役割です。景気とは、国の経済が活発に動いているか、それとも沈滞しているかということです。不景気(不況)と好景気(好況)とは交互にくり返されます(景気変動)。不景気のときには企業の生産活動はふるわず、失業者は増加します。所得は低下しますから、消費も低迷します。物価はあまり上らず、ときには下落すること(デフレーション)もあって、企業の生産活動に好ましくない影響をおよぼします。経済はできるだけなだらかに拡大していったほうが望ましいので、不景気のときには、政府は減税を行ったり公共事業への支出(公共投資)を増やしたりして、生産や消費の活動を活発にしようとします。
好景気もいいことずくめではありません。好景気のときには物価の上昇(インフレーション)が進み、人々の生活を圧迫するからです。そこで、好景気のときには、政府は増税や公共事業の削減によって景気をおさえようとします。このように、財政の活動を通じて景気の波を調節する政策のことを、財政政策といいます。(133P:下線部は引用者による)
不景気のとき
- 経済活動を活発にするために、拡張的な政策をおこないます。
- 公共事業を増やします。
- 減税をおこないます。
好景気のとき
- 景気が過熱しすぎるのを防ぐために、縮小的な政策をおこないます。
- 公共事業を減らします。
- 増税をおこないます。
財政に組み込まれた機能
(やや難)財政の制度には、景気を安定化させる機能が組み込まれています。
- 累進課税制度・・・景気が過熱したときに抑える効果があります。
- 失業保険制度・・・不景気のときに、失業者に給付金を与えることによって、消費の減少を抑える効果があります。
これらの、財政に「組み込まれ(built in)」て、「安定化させる(stabilize)」機能のことを、「ビルト・イン・スタビライザー(built-in stabilizer)」(自動安定化装置)といいます。
民間活動を阻害するおそれ
(やや難)ただし、財政政策が、民間の活動を阻害してしまう場合があります。
- 不景気のときに、拡張的な財政政策をおこなうとします。
- このとき、政府は「公債」を発行します。
- すると、利子率が上昇します(この関係は、マクロ経済学でくわしく学びます)。
- よって、民間の企業はお金を借りにくくなってしまいます。
このように、政府のおこなう財政政策が、民間の活動を「押し出す」ことを「クラウディング・アウト(crowding out)」といいます。
- このような「クラウディング・アウト」を防ぐためには、同時に「金融政策を」おこなうことが考えられます。
- 利子率の上昇を抑えるためには、拡張的な金融政策をおこなえばよいと考えられます。