「う」

お金のことわざ、久々に更新です。
「う」ではじまるビジネス、経済学関連の格言や言い回しです。
経済学の学習に関係の深いものは「★」をつけてあります。


飢えては食を選ばず ★

飢えたときは、どんな粗末な食べ物でも、選り好みをせずに食べる。

【経済学】→「限界効用逓減の法則」と似ていますが、ちょっと違います。効用の場合、消費量が増えても飽きることはないと仮定します(不飽和の仮定)。よって、無差別曲線を描くと、「右上ほど効用が高くなる」わけです。

「飢え」の場合は、これが満たされて、やがて満腹になるのが一般的です。「ちょうどよい」消費量の組み合わせを超えた場合、満足感はやや劣ります。この場合の無差別曲線は次の形になります。これは、「局所飽和」のケースです。

烏合の衆 ★

カラスの集まりのように、まとまりがないという意味。統一性も規律もなく寄せ集められた人びと。

【経済学】→「プライステーカー」の仮定。完全競争市場では、個々の消費者や生産者は市場で決まった価格を受け入れるだけで、価格に対する影響力(支配力)はないと仮定します。

雨後の筍 ★

タケノコは雨の後にいっせいに生えることから、似たようなものが次々と現れる様子をあらわします。

【経済学】→独占的競争市場では、長期的には利潤を求めて新規の参入者があらわれるため、似たようなビジネスが次々とあらわれます。

牛の歩み

牛ののろのろした歩きかたから、進歩や進展の遅い様子。

鰻登り

ウナギが身をくねらせて水中を登っていく様子から、売上げ、物価などが急速に上がったり、人が出世していく様子などでもつかいます。

兎の毛でついたほど ★

ウサギの毛の先で突いたように、わずかなことのたとえ。

【経済学】→それでも、まったく刺激が無いわけではありません。これは「限界(marginal)」ということばのイメージをつかむのに役立ちます。

馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない

気の進まないことについて、他人が無理に動かそうとしても無駄である。
You can lead a horse to water, but you can’t make it drink.

売り言葉に買い言葉

もとは商売に関係する言葉で、「売り言葉」は商人が商品を売るために言う言葉(営業トーク)、「買い言葉」は客が商品を買うための言葉(値切りなど)を指しています。現代では一般的に、辛辣な言葉のやりとりをあらわすときにつかわれます。

運を天に任せる

すべてのリスクを考慮に入れたとしても、最終的には運に頼るしかないという状況。運や偶然に左右される投資やビジネスの世界でよく使われます。


え→

「あ・い」はこちから

電子書籍新刊『ミクロ経済学書き込みノートのまとめ』

2023/06/05
電子書籍の新刊を出版しました。
ミクロ経済学書き込みノートのまとめ

【内容】
この本は、ミクロ経済学の基礎的な内容をまとめたものです。サイト「経済学道場」(keizaigaku.jp)で、受講生のみなさんに配布している「一問一答ミクロ経済学」(簡易版)をもとに作成したテキスト「ミクロ経済学書き込みノート」について、電子書籍として読みやすく再構成・加筆しました。

【もくじ】
はじめに Preface
ミクロ経済学の全体像 Outline 「価格と資源配分」の旅へ
1.消費者理論 Consumer theory 「需要曲線は右下がり。なぜ?」
2.生産者理論 Producer theory 「供給曲線は右上がり。なぜ?」
3.部分均衡分析 Partial equilibrium 「中学の公民でおなじみ。」
4.一般均衡分析 General equilibrium 「わかった!難しいということが。」
5.不完全競争市場 Imperfect competition 「ミクロの山場!」
6.市場の失敗 Market failure 「政府がやる気を出す理由。」
7.ゲーム理論 Game theory 「戦略の利得」
8.貿易理論 Trade theory 「自由か?保護か?」
あとがき Afterword

【特徴】
・各章のはじめに、「学習の目的」と概要を載せています。
・キーワードや重要な箇所は、( 太字 )という形で示しております。全体で382あります。
・グラフは102個あります。グラフの下には理解を高めるためのコメントを記しております。

本文は52,000字程度で、全体で200頁くらい(kindle換算)です。


試し読み(本文)

ミクロ経済学の全体像 Outline

「価格と資源配分」の旅へ

ミクロ経済学では、おもに価格の決まりかたを分析します。この価格は、市場(しじょう)において、買い手である消費者と売り手である生産者のやりとりによって決まります。これらの消費者と生産者は、おのおの自分たちの利益が最大になるように行動します。
ただし、消費や生産につかえる資源は有限です。よって、適切に配分する必要があります。ミクロ経済学では、市場をとおして、これらの資源が効率的に配分されることをみていきます。そして、資源配分がうまくいかない状態(独占や市場の失敗)などについても分析していきます。

1.消費者理論 Consumer theory
 消費者理論では、「消費者」の行動を分析し、「需要曲線」が「右下がり」の形になる理由についてみていきます。消費者は、予算の制約のもとで、「効用」を最大化するために行動します。

2.生産者理論 Producer theory
生産者理論では、「生産者」の行動を分析し、「供給曲線」が「右上がり」の形になる理由についてみていきます。生産者は、「費用」を考慮に入れて、「利潤」が最大となるように行動します。

3.部分均衡分析 Partial equilibrium
部分均衡分析では、「需要曲線」と「供給曲線」の交点で「均衡価格」と「均衡取引量」がきまり、社会的にのぞましい資源配分が達成されることをみていきます。

4.一般均衡分析 General equilibrium
一般均衡分析では、「1.消費者理論」でまなんだ分析方法を用いて、社会的にのぞましい資源配分についてみていきます。

ここまでは、「完全競争」市場を仮定して、のぞましい資源配分を分析します。

5.不完全競争市場 Imperfect competition
不完全競争市場では、「独占」などをとりあげて、「完全競争」が成立しない場合についてみていきます。

6.市場の失敗 Market failure
市場の失敗では、市場機能がはたらいているにもかかわらず、のぞましい資源配分が達成されない状態をみていきます。

7.ゲーム理論 Game theory
ゲーム理論では、人びとの「行動」の意思決定プロセスを分析します。

8.貿易理論 Trade theory
貿易理論では、ミクロ経済学でまなんだ分析方法を用いて、貿易がおこる理由について分析します。


ミクロ経済学書き込みノートのまとめ

こちらと合わせてご検討ください。
数式とグラフを使わない経済学の予習: (付録)数式とグラフの考え方 Kindle版

関数とブラックボックス

関数をはじめてまなぶとき、ブラックボックスを例にとって説明する場合があります。

これは、「箱の中になにかを入れると、箱からなにかが出てくる」というイメージを持たせるためです。

箱の中にインプットされた値と、アウトプットされた値の間の関係を式であらわしたものが関数です。

(引用:『数式とグラフを使わない経済学の予習: (付録)数式とグラフの考え方 Kindle版』2-2.グラフと関数の関係から)

電子書籍 新刊(試し読みあり)

2023/05/24
このサイトをまとめた電子書籍を出版しました。
数式とグラフを使わない経済学の予習: (付録)数式とグラフの考え方 Kindle版

【構成】
この本は、このサイト「経済劇場」で公開していた冊子が元となっております。電子書籍化にあたり、教科書の引用文を削除し、代わりに付録として数式とグラフに関する説明を追加しました。本文は42,000字程度で、画像が40個ほど、全体で130頁くらい(kindle換算)です。


【内容】
経済学をはじめて学ぶ人向けの入門書です。二部構成です。はじめは、数式やグラフを使わずに、経済学の基本的な考え方を解説しています。中学で習った経済用語から始めて、経済学の世界観、消費者や生産者の行動、市場のしくみ、市場の失敗、貨幣と金融、政府と財政、貿易と為替について学びます。さらに、付録では数式とグラフの考え方を解説しています。経済学でつかう関数やグラフ、とくに微分について、「限界」(マージナル)という考え方について理解を深めることを目標としています。

【レベル】
中学で学ぶ公民の内容に、積み上げていく形で説明しています。
付録の「数式とグラフの考え方」で取り扱う内容は、経済学の学習で必要な数学の知識としてはかなりの初歩のレベルです。
「先取り」学習の題材として、ミクロ経済学の生産者理論で学ぶ費用曲線を取り上げています。そこでは総費用Total Cost(TC)をあらわす次の式「TC= aX^3 + bX^2 + cX + d」について限界費用を求め、その意味と、グラフの表し方を理解することを目標としています。
これよりも高度な内容について学習をお望みの方のご期待にはそえないと思います。

本書は、経済学に興味はあるが数学が苦手という方や、経済学の基本的な知識を身につけたいと考えている方におすすめです。


もくじ

はじめに
中学でまなんだ経済用語
1.経済学の世界観
1-1.商品とはなにか?(試し読みあり。このページの下の方)
1-2.お金とはなにか?
1-3.市場という舞台
1-4.経済学の世界観
1-5.メインキャラクター
2.消費者と効用
2-1.満足感を求めて
2-2.予算の壁
2-3.消費者の役割
3.生産者と利潤
3-1.利潤を求めて
3-2.コストの壁
3-3.完全競争の仮定
3-4.生産者の役割
4.市場のしくみ
4-1.市場の均衡
4-2.資源の配分
5.市場の失敗
5-1.独占の問題点
5-2.市場の失敗
6.貨幣と金融
6-1.貨幣の役割
6-2.金融
(補足)債券と株式の違い
6-3.中央銀行
6-4.金融政策
7.政府と財政
7-1.政府の役割
7-2.租税
7-3.公債
7-4.財政政策
8.貿易と為替
8-1.貿易の役割
8-2.為替相場とは
8-3.貿易と政策
まとめ
—————-
(付録)数式とグラフの考え方
1.ことばと式とグラフをむすぶ
1-1.なぜ数学が面倒なのか?
1-2.どう考えればいいのか?
2.関数とグラフ:箱の中は?
2-1.需給曲線の考え方(試し読みあり。このページの下の方)
2-2.グラフと関数の関係
2-3.関数とグラフの形
2-4.「1次関数」
2-5.「2次関数」
3.微分とは?:要するに…
3-1.傾向の抽出
3-2.点を拡大して考える
4.微分の方法:「前に、1引く、そして消す」
4-1.微分の3つのステップ
4-2.2次関数の微分の例
5.経済学への応用:「マージナル」という考え方
5-1.限界(マージナル)の概念
5-2.費用関数のまとめ(先取り)
あとがき


試し読み(本文)

1-1.商品とはなにか?

経済学では、商品とお金のやりとりを分析します。まず、これらのことばの意味を考えていきましょう。

財とサービス

売買されるものを「商品」といいます。商品は「財」と「サービス」にわけることができます。「財」は形のある「もの」です。英語では「goods」(グッズ)といいます。なぜならば、売ったり買ったりできるほど「良いもの」だからです。これに対して「サービス」には形がありません。お金とひきかえに、自分の代わりになにかをやってもらう「こと」が「サービス」です。本来はこのように「財」と「サービス」は区別して用いるべきですが、経済学ではおもに「財」ということばをつかいます。

価値

「商品」が売り買いされるのは、「商品」が「良いもの」や「良いこと」だからです。この「良さ」を「価値」といいます。よって、売り買いとは、「価値のやりとり」と考えることができます。

生産と消費

「価値」をうみだすことを「生産」といいます。「生産」をおこなうのが「生産者」です。これに対して、他人がうみだした「価値」を自分のものにすることを「消費」といいます。「消費」をおこなうのが「消費者」です。

交換

他人の「価値」を自分のものにするためには、こちらも代わりに「価値」を相手に与えなければいけません。このような「価値」のやりとりを「交換」といいます。交換のやりかたはいろいろあります。他人の「財」や「サービス」に対して、自分の持っている「財」や自分ができる「サービス」を与えることがあります。ただ、現在の社会では、この交換の「仲立ち」として、「お金」(貨幣)をつかうことがひとつの重要なルールとなっています。このような社会を「貨幣経済」といいます。


試し読み(付録)

2.関数とグラフ:箱の中は?(一部)

関数とグラフは同じ情報を別の方法で表現したものです。

2-1.需給曲線の考え方

次のグラフは、経済学であつかう最も有名なグラフです。

 

価格と需要・供給の関係

これは、横軸に価格、縦軸に需要量や供給量をプロットして説明したものです。
価格が上がると、生産者は生産量を増やそうとします。一方で、消費者は消費量を減らします。これらは、日常的な感覚にもとづいたものです。
経済学では、このような関係を関数や式であらわし、グラフで視覚的に示していきます。

需要と供給の例

例えば、ある価格のとき、買いたいと思う人の数と売りたいと思う人の数が同じだったらどうでしょうか。この場合、その価格で、需要と供給が一致していることになります。
ただ、いきなり需要と供給が一致することはありません。消費者と生産者の行動パターンは異なるためです。それぞれの行動を観察して、価格と数量(需要量や供給量)の関係をとらえることで、グラフや式を描くことができます。

経済学と数学の関係

グラフや式は、経済的な出来事について、その因果関係を抽象化してあらわしたものです。これに、個々の事例をあてはめることで、現実的な出来事を説明することが可能になるのです。
また、数学的な手法をつかうことで、経済学の理論やモデルをよりシンプルに表現し、予測や分析に役立てることも可能になります。

2-2.グラフと関数の関係

グラフと関数の関係をみていきましょう。

グラフの考え方

グラフは、2つの事柄(ことがら)について、その関係を視覚的に示したものです。
この関係は、文章であらわすと、

という形になります。この( )と〔 〕の中は、さまざまな事柄が入ります。
例えば、「(りんごが1個の)とき、〔その重さは300グラム〕である。」という関係などです。


数式とグラフを使わない経済学の予習: (付録)数式とグラフの考え方 Kindle版